## 晴明の扇、陰陽師の象徴
扇子。夏の暑さをしのぐ涼やかな道具であり、また雅やかな舞の道具でもある。そして、ある人物を象徴するアイテムとして、私たちの心に深く刻まれている。その人物こそ、平安時代の陰陽師、安倍晴明である。
晴明といえば、五芒星を配した扇子を手にした姿がすぐに思い浮かぶ。数多の物語や絵画、そして現代の漫画やアニメーションなどでも、晴明は常に扇子を携えている。これは単なる演出ではなく、陰陽師という職業、そして晴明の能力と深く結びついている。
陰陽師は、陰陽五行説に基づき、天文や暦を司り、吉凶を占うとされた。その際に用いられたのが式盤や暦、そして扇子だった。扇子は風を起こし、邪気を払う「呪具」としての役割を担っていたと考えられている。晴明が扇子を用いて式神を操ったり、結界を張ったりする描写は、陰陽師の神秘的な力を象徴的に表現していると言えるだろう。
また、晴明が用いていたとされる扇子は、単なる白い扇子ではなく、五芒星が描かれた特別なものであった。五芒星は陰陽五行説における重要なシンボルであり、木・火・土・金・水の五元素を象徴している。この五芒星を配した扇子を持つことで、晴明は陰陽五行の力を自在に操ることができると信じられていた。
現代においても、晴明の扇子は陰陽師の象徴として広く認識されている。京都の晴明神社をはじめ、晴明にゆかりのある場所では、五芒星の扇子をモチーフにしたお土産などが販売されている。これは、晴明という人物、そして陰陽道への人々の関心の高さを示していると言えるだろう。
晴明の扇子は、単なる道具ではなく、陰陽師の力と神秘性を象徴する重要なアイテムである。その姿は、現代においてもなお、人々の想像力を掻き立て、平安時代の神秘的な世界へと誘ってくれる。そして、扇子そのものが持つ風雅な趣は、晴明という人物の魅力をさらに引き立てていると言えるだろう。
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