## 冷泉天皇と安倍晴明、陰陽師が仕えた謎多き帝

平安時代中期、宮廷に陰陽師として仕えた安倍晴明。その名は現代まで広く知られていますが、彼が仕えた天皇の一人、冷泉天皇については、一般的にはあまり知られていません。冷泉天皇と安倍晴明の関係性を探ることで、当時の宮廷社会や陰陽道への理解を深めることができます。

冷泉天皇（在位954～969年）は、村上天皇の皇子として生まれ、父帝の崩御後、皇位を継ぎました。しかし、その治世は謎に包まれています。父帝の治世とは打って変わり、政治の実権は藤原氏に掌握され、冷泉天皇自身は政治の表舞台に立つことはありませんでした。さらに、在位中に精神を病み、弟の円融天皇に譲位しています。この精神疾患の原因についても諸説あり、いまだ解明されていません。

このような謎多き天皇の治世に、安倍晴明は陰陽師として宮廷に仕えていました。晴明は、冷泉天皇の皇子である花山天皇の誕生にも関わっていて、花山天皇の立太子にも深く関与したという説もあります。

冷泉天皇の精神疾患については、陰陽道的な解釈も存在します。当時の貴族社会では、病気や災いは怨霊や祟りによるものと考えられており、陰陽師はそれらの原因を究明し、対処する役割を担っていました。冷泉天皇の病も、何らかの霊的な影響によるものとされ、晴明が祈祷や儀式を行った可能性も考えられます。

しかし、冷泉天皇と晴明の関係を示す具体的な史料は少なく、その実態は謎のままです。例えば、晴明が編纂したとされる「占事略決」には、冷泉天皇に関する記述は見当たりません。

一方で、冷泉天皇の時代は、陰陽道が宮廷社会で重要な役割を果たしていた時期でもあります。陰陽師は、暦の作成や吉凶の占断だけでなく、医療や呪術にも関わり、天皇や貴族の生活に深く関わっていました。晴明も、冷泉天皇の治世下で、様々な陰陽道の儀式や祈祷を行っていたと考えられます。

冷泉天皇と安倍晴明の関係は、史料の不足から断片的にしか窺い知ることができません。しかし、二人の存在を通して、謎に包まれた冷泉天皇の治世、そして陰陽道が宮廷社会で果たした役割について、想像力を掻き立てられます。今後の研究によって、新たな史料の発見や解釈が進み、冷泉天皇と安倍晴明の関係、そして当時の宮廷社会の真実に迫ることが期待されます。